THUMGY DataとExcelについて(3)

皆さん、こんにちは。

前回に続き、『THUMGY DataとExcelについて』というテーマで記事を書きます。今回が最終回です。

前回はデータ分析を行う目的でExcelを使う場合の課題に対するTHUMGY Data(※1)の対応を書きましたが、今回はそのまとめを記述していきます。

前回および前々回の記事をまとめると、データ分析を行う際にExcelからTHUMGY Dataに切り替えると以下の4つの効果があることが分かります。

効果1:大規模データの処理が可能

効果2:エラーを発見できないリスクがない

効果3:作業の属人化が防止できる

効果4:労働生産性が向上する

下図は、上記をまとめたものです。

THUMGY Dataは、年間8,800円/人で利用できます。また、操作性もExcelと同じように使いやすいユーザーインターフェースを採用するなどして、「高額で高機能な専門ツール(※3)の機能をExcelと同等の価格感で利用できる本格的なデータ分析ツール」という点がTHUMGY Dataの強みになります。

現在、Excelで上記のような課題感をお持ちの方は、データ分析ツールとしてTHUMGY Dataの利用をご検討ください。

当記事の内容でご意見やご感想がありましたら、ご連絡をいただけますと幸いです。また、CAATsに関するご質問があれば、遠慮なくお問い合わせください。

お問い合わせ先:https://www.icaeajp.or.jp/inquiry/contact/

※1:データ分析の普及を目的に、監査においてデータ分析に長年携わってきた公認会計士が開発したデータ分析ソフトウェアです。開発および提供は三恵ビジネスコンサルティング株式会社が行っています。三恵ビジネスコンサルティング株式会社では、監査人が効率的にデータ分析を実践できることを目的として、すぐに監査に利用できるオープンスクリプト(※2)をWebサイトで提供しています。

※2:オープンスクリプト(こちら)とは『THUMGY Data for Analytics』で実行できるプログラムであり、誰でも無償で利用でき、変更や再配布も自由に許可されています。

※3: 専門ツールは大量データを高速に処理ができる設計になっているデータ分析ツールのことを指しており、ETLツールおよびセルフサービスBIを想定しています。いずれも年間一人あたり数十万円のライセンス使用料が一般的です。

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THUMGY DataとExcelについて(2)

皆さん、こんにちは。

前回に続き、『THUMGY DataとExcelについて』というテーマで記事を書きます。前回はデータ分析を行う目的でExcelを使う場合の課題を書きましたが、今回はそのExcelの課題に対してTHUMGY Data(※1)がどのように対応できるかについて、記述していきます。

Excelの課題1:処理可能なデータ件数には上限がある

THUMGY Dataにはシステム上のデータ件数の上限はありません。私が実際にデータ分析に使用した最も多いデータ件数は2,500万件程度でした。データ分析を行うPCによって時間差がありますが、処理は止まることはありませんでした。

Excelの課題2:大規模データの場合、パフォーマンスが低下する

THUMGY Dataは、大規模データを処理することを想定して設計したデータ分析ソフトウェアのため、数十万件程度であれば、大きなパフォーマンスの低下はありません。

Excelの課題3.エラーチェックが難しい

THUMGY Dataは、明示的に条件を設定しない限り、すべてのデータを対象にして処理をするため、集計漏れによるエラーはシステム的に発生しません。また、スクリプトの構文などに不備があった場合、処理が中断されるため、集計エラーなどが発生するリスクはありません。

Excelの課題4.処理ロジックのブラックボックス化

THUMGY Dataは、操作履歴からスクリプトを作成するため、スクリプトを見ると、操作手順を把握することができ、操作ログを見ると、処理結果が確認できます。THUMGY Dataを使うと処理の全体像が見える化されるため、他者によるレビューや引継ぎなどが容易にできるようになり、作業の属人化が防止できます。

Excelの課題5.処理の自動化が難しい

処理の自動化にはプログラム作成が必要になりますが、Excelの場合、VBAを読み書きできる専門スキルが必要になるのに対し、THUMGY Dataの場合、1つの処理は基本的には2行で記述され、記述も分かりやすい英単語のため、誰でも処理内容について理解できます。また、THUMGY Dataでは、操作履歴をコピーしてスクリプトを作成するため、xBase言語を自ら記述する必要はありません。したがって、THUMGY Dataは、スクリプト(プログラム)を作成するための専門スキルは不要です。

次号では、Excelの課題に対するTHUMGY Dataの対応について、対比しながらまとめていきます。

当記事の内容でご意見やご感想がありましたら、ご連絡をいただけますと幸いです。また、CAATsに関するご質問があれば、遠慮なくお問い合わせください。

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THUMGY DataとExcelについて(1)

皆さん、こんにちは。

今回は、『THUMGY DataとExcelについて』というテーマで記事を書きます。

Excelは安価で使いやすく、機能が豊富でインターネットや書籍などからも必要な情報が入手できるため、ほとんどのビジネスパーソンがExcelを仕事やプライベートで使っているのではないでしょうか。

私も日常的にExcelを使っており、その便利さを痛感しています。ただ、Excelにも課題はあるため、用途に応じてツールを使い分けていくことが重要だと考えています。

特にデータ分析を行うという観点からは、Excelには以下の5つの課題があると考えています。

1.処理可能なデータ件数には上限がある

Excelがデータとして扱えるデータ件数は約100万件までです。日常的に取り扱うデータ件数としては十分ですが、データ分析をする場合には、この件数が制約になる場合があります。

2.大規模データの場合、パフォーマンスが低下する

Excelは約100万件まではデータを扱えるということになっていますが、数十万件になると、ファイルを開いたり、保存したりするだけで、10秒以上かかったり、データの更新をするだけで、数十秒かかったりする場合もあるため、大規模データを使ったデータ分析には適していません。

3.エラーチェックが難しい

Excelは各セルに関数や数式を直接記述して各種計算やデータ処理を行う方法が一般的ですが、関数や数式に設定したデータ処理の対象範囲は固定されるため、処理対象のデータが対象範囲を超えていたとしてもエラーにはなりません。したがって、正しく処理がなされているかどうかを判断するために、論理整合性を確認するための検算式を入れるなどの工夫をする必要があります。

4.処理ロジックのブラックボックス化

一般的にデータ処理は処理手順に従って行われますが、Excelの場合、シートを作ったり、ピボットテーブルを作成したり、関数をセルに埋め込んだりして、処理を進めていくため、Excelファイルを開いて見ただけでは、処理手順が全く見えません。結果として処理ロジックのブラックボックス化につながってしまいます。

5.処理の自動化が難しい

Excelで処理の自動化を行うためには、VBA(Visual Basic for Applications)でプログラムを作成する必要があります。最近のバージョンでは、「自動化」メニューが用意されており、操作記録をVBAに変換する機能も付いていますが、そのVBAを再利用するためには、VBAのメンテナンスが必要になるケースが多く、結局はVBAのスキルが必要となり、誰でも処理の自動化ができるわけではありません。

次号では、上述したExcelの課題に対して、THUMGY Data(※1)がどのように対応しているのかについて記述していきます。

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CAATsと非財務情報の開示について

皆さん、こんにちは。

今回は、『CAATs(※1)と非財務情報の開示について』というテーマで記事を書きます。

近年、企業評価において非財務情報の重要性が高まっています。非財務情報は、企業の財政状態や経営成績を示す財務情報以外の情報であって、主に環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関連した情報をいいます。「環境」には温室効果ガスの排出量、エネルギー使用量、廃棄物管理、資源の持続可能な利用などが含まれ、「社会」には労働条件、人権尊重、多様性の推進、地域社会への貢献、従業員の福利厚生などが含まれます。また、「ガバナンス」には企業統治の透明性、取締役会の構成、倫理規定の遵守、リスク管理体制などが含まれます。いずれも数値だけだは表せない定性情報が主な内容になっています。

これまでの財務情報だけでは、企業が将来にわたって継続的に収益を上げていけるかどうかの判断が難しくなってきたことから、非財務情報の開示に対するニーズが高まっています。とりわけ、非財務情報の中でも特に企業や社会が長期的に持続可能であることを目指す概念である「サステナビリティ」に関する開示基準が整備されつつあり、日本においても東京証券取引所プライム市場上場企業に対して、段階的に有価証券報告書等に開示を義務付ける案が出ています。開示が義務付けられた場合、投資家が開示情報を安心して利用できるために、第三者による保証が重要になり、どのレベルで保証をすべきかなどの検討が現在行われています。具体的な事例として、日産自動車株式会社が公表している「サステナビリティデータブック 2024(こちら)(以下、当ブック)」をご紹介します。当ブックによると、全体構成としては、「環境」、「社会性」、「ガバナンス」、「データ集」の大きく4つのパートに分かれており、それぞれ、主に定性情報が掲載されていますが、例えば、以下のように、計算された数値結果が表やグラフなどで表示されています。

いずれも計算に使用されるデータは多種多様であり、どのようにして数値の計算結果の正確性を確認するのかについての検討が必要になると考えます。現在は、主に表計算ソフトなどを使って、手動で確認をしている場合が多いのではないかと推察しています。また、定性情報の作成プロセスおよび計算結果に至るプロセスの内部統制の整備および運用状況の評価も検討されていると推察します。ただ、内部統制の整備および運用状況の評価で合理的な保証までできるのかについては、少し疑問が残ります。もちろん、各プロセスの内部統制は必須になると考えますが、内部統制がきちんと整備および運用されていたとしても、「おそらく大丈夫だろう」という心証は得られても、計算ミスやロジックミスが全くないという保証にはなりません。CAATsを利用すると、再計算と照合という手続きが実施できるため、数値の計算結果の正確性を完全に確認できます。再計算と照合は、会社が計算に利用したデータとロジックを監査人が入手し、監査人がデータ分析ツールを使って同じ計算を行い、その計算結果と会社の計算結果を照合する手続のことです。もし、監査人の計算結果と会社の計算結果が同じであれば、会社の計算結果が正しいという非常に強力な心証を得ることができるため、「合理的な保証」が可能になると考えます。

財務情報も複数のデータを利用してデータ分析を行いますが、非財務情報の場合、比べ物にならないほど多種多様なデータが必要になると想像しています。この時に、効率的かつ効果的に保証業務の手続を行うためには、利用するデータ分析ツールが重要になってきます。この点については、以下の特長を備えたCAATsツールを利用することが有効と考えます。

・データ編集が不可

・大量データの処理

・ログ(操作履歴)の記録

・スクリプトによる自動化

特に「データ編集が不可」という特長はCAATsツールに取り込んだ後はデータの編集ができないため、誤った計算結果になるリスクがありません。また、CO2排出量の計算や研修受講実績の集計などでは、大量のデータを扱うことが予想されるため、「大量データの処理」という特長も重要といえます。

THUMGY Data(サムジーデータ)(※3)はCAATsツールに分類されるデータ分析ツールであり、プログラミング言語の知識がなくてもプログラム(スクリプト)を作成できる機能が実装されており、大変、使いやすいデータ分析ツールになっています。THUMGY Dataの詳細については、以下のリンクを参照ください。

https://www.sankei-bc.co.jp/thumgy

今回は非財務情報の保証業務の話でしたが、今後も新しい形態の監査業務もしくは保証業務が出てくると思われます。一つだけ確実に言えることは、どのような形態の業務が出てくるかどうかにかかわらず、今後、ますます、監査人やビジネスパーソンにはデータ分析の素養が求められるということです。データサイエンスはハードルが高いと思われている方は、まずは、CAATsに取り組んでいただき、データ処理やデータ分析の基本スキルを身に着けてはどうでしょうか。

ICAEA JAPAN(※2)では、CAATs人材の育成プログラムをご用意していますので、ご興味のある方はお問い合わせください。

当記事の内容でご意見やご感想がありましたら、ご連絡をいただけますと幸いです。また、CAATsに関するご質問があれば、遠慮なくお問い合わせください。

お問い合わせ先:https://www.icaeajp.or.jp/inquiry/contact/

※1:CAATs ( Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法 )とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいい、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

※2:ICAEA JAPANとは、一般社団法人 国際コンピュータ利用監査教育協会の略称であり、CAATsを実務で活用できる専門家(=CAATs技術者)の育成・支援を行うことで、日常的な不正・誤謬を発見・防止することに貢献することを目指して設立されました( https://www.icaeajp.or.jp/ )。

※3:CAATsの普及を目的に、CAATsに長年携わってきた公認会計士が開発したCAATs専用ツール。開発および提供は三恵ビジネスコンサルティング株式会社が行っています。三恵ビジネスコンサルティング株式会社では、監査人が効率的にCAATsを実践できることを目的として、監査に便利なオープンスクリプトをWebサイトで提供しています(こちら)。

CAATsを活用したデータ監査の普及に向けた取り組み

皆さん、こんにちは。

今回は、『CAATsを活用したデータ監査の普及に向けた取り組み』というテーマで記事を書きます。

自己紹介のページ(こちら)にある通り、私は監査法人で25年間、働いてきました。

私は入社して以来、ライフワークとしてコンピュータ利用監査技法(以下、CAATs ※1)の実践と普及に取り組んできましたが、CAATsを活用したデータ監査を社会全体に普及させたいと思い、2017年に監査法人を退職して会社を設立し、現在に至っています。

会社設立当初は、データ監査に必要な知識やスキルが社会に不足していると感じたため、教育協会であるICAEA JAPAN(※2)を設立するとともに、データ監査導入を支援する三恵ビジネスコンサルティング株式会社も設立してCAATsを活用したデータ監査を普及するための事業を始めましたが、創業して3年くらい経過した際に、思い通りにデータ監査が拡がっていないように感じ始めました。
その要因として、私はCAATsツールの導入コストが高いことと、CAATsツールを使った分析にかかるノウハウが社会に提供できていないのではないかと思うに至りました。現在、利用されているCAATsツールはプロフェッショナルが使うソフトウェア(プロフェッショナルツール)であることから、一人年間数十万円のコストがかかります。プロフェッショナルツールとしては、妥当な価格であるとは思うものの、それでは、より多くの監査人がCAATsを当たり前に使えるような環境を作ることは難しいと感じました。また、いくらすべての監査人のPCにCAATsツールが使える状態にあったとしても、使い方が分からなければ、普及することは難しいとも感じました。私は、データ監査を特定のプロフェッショナルだけの世界ではなく、監査人であれば誰もが使っている世界を作りたいと考えています。

そこで、私は誰もが気軽に導入できるコストでCAATsツールを開発することを思い立ち、構想から4年を経て、2023年7月にTHUMGY Data(サムジーデータ ※3)というCAATsツールをリリースしました。

THUMGY Dataはコスト面での課題を解決するために、年間一人8,800円で提供することを決めました。通常、価格は投資コストや販売見込みなどから算出しますが、私は、CAATsを活用したデータ監査を普及させたいという思いから、理念で価格を決めました。この価格帯であれば、特定の監査人だけではなく、より多くの監査人が使える環境に近づけると思ったからです。また、CAATsツールを使った分析にかかるノウハウについては、THUMGY Dataで分析が行えるプログラム(以下、スクリプト)を無償で提供するという『オープンスクリプト※4』の提供も予定しています。

THUMGY Dataは、継続的に機能追加をしていくとともに、来るべきAI監査にも対応することも予定しています。

また、オープンスクリプトも準備が整い次第、公開していきますので、皆さん、ご期待ください!→公開しています(こちら)

THUMGY Dataの詳細については、以下のリンクを参照ください。
https://www.sankei-bc.co.jp/thumgy

当記事の内容でご意見やご感想がありましたら、ご連絡をいただけますと幸いです。また、CAATsに関するご質問があれば、遠慮なくお問い合わせください。

お問い合わせ先:https://www.icaeajp.or.jp/inquiry/contact/

※1:CAATs ( Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法 )とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいい、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

※2:ICAEA JAPANとは、一般社団法人 国際コンピュータ利用監査教育協会の略称であり、CAATsを実務で活用できる専門家(=CAATs技術者)の育成・支援を行うことで、日常的な不正・誤謬を発見・防止することに貢献することを目指して設立されました( https://www.icaeajp.or.jp/ )。

※3:CAATsの普及を目的に、CAATsに長年携わってきた公認会計士が開発したCAATs専用ツール。開発および提供は三恵ビジネスコンサルティング株式会社が行っています。三恵ビジネスコンサルティング株式会社では、監査人が効率的にCAATsを実践できることを目的として、監査に便利なオープンスクリプト(※4)をWebサイトで提供することを予定しています。

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監査の自動化について(1) ~CAATs FLow~

皆さん、こんにちは。

今回は、監査の自動化について、考察したいと思います。

監査の自動化を考察するにあたっては、監査がデータを使った監査(以下、データ監査)であることを前提としたうえで、監査のどの部分を自動化するのかを定義する必要があります。ここでは、ICAEA JAPAN(※1)が定義したCAATs Flowをベースに考察をしていきます。データ監査は下図のCAATs Flowに基づいて実施します。

CAATs Flowのプロセスのうち、データ分析ツールを利用するプロセスは、「データの分析」のみとなります。CAATs(※2)をデータ分析ツールと同意と誤解されがちですが、CAATsはCAATs Flow全体を意味します。

ここで、CAATs Flowの解説を行います。

CAATsの最初のプロセスは、「事象の知覚」です。これは、関連する法令やルールの改変、不正事例の発生など、会社にとってリスクや課題になる可能性のある事象を認識するプロセスです。

次に「監査テーマ(リスク・課題)の選定」というプロセスになります。このプロセスでは、認識された事象が内部統制などによって発生を防止できるか否かを判断し、防止できない可能性があると判断された場合には、当該事象を監査テーマとして選定します。

監査テーマを選定するとその監査テーマに関する「仮説検証手続の立案」というプロセスに入ります。このプロセスでは、監査対象となるデータに対して一定の仮説を立案し、当該仮説に沿った事象が発生しているかどうかを確認できる条件や事象などを明確にした文章を作成します。この文章を分析シナリオと言い、以下の2つに分類することが出来ます。

分析シナリオを作成すると、「データの入手」というプロセスに入ります。このプロセスでは、分析シナリオに必要なデータ(以下、ソースデータ)を安全かつ適切な形式で入手します。ソースデータの多くは会計システムや販売管理システムなどに蓄積されている「内部業務データ」から抽出されますが、株価や為替などの「外部オープンデータ」やメールなどの「その他データ」からもデータを抽出する場合があります。

データ分析に必要なデータを入手すると、「データの分析」というプロセスに入ります。このプロセスでは、データ分析を行うソフトウェア(以下、データ分析ツール)を使用してデータの分析を行います。まずは、ソースデータをデータ分析ツールに取込む処理(インポート処理)を行います。次に、データ分析ができる仕様のデータ(以下、分析用データ)を作成するための処理(加工処理)を行います。加工処理の具体例としては、複数データの結合や条件に合致するデータの抽出、欠落データの補完や表記ゆれの統一などのデータクレンジング、帳票形式データから不要な行・項目を削除するなどの整形処理などがあります。加工処理によって作成された分析用データを対象にして分析シナリオに基づくデータ分析を行います。

データ分析では、データから洞察を得たり、仮説の検証を行ったりするために、グラフなどのチャートを利用したデータの視覚化(ビジュアライゼーション)を活用する機会が増えています。データ分析によって得られた分析結果を評価し、必要に応じて評価結果から分析シナリオなどを見直し、最終的な分析結果を評価し、報告します。なお、発見型の分析シナリオの場合、データ分析を定型化することができます。

実務では、データ分析で仮説を検証した結果をもって仮説の見直しをしたり、それに伴うデータの特定や分析シナリオを見直したりすることが多いため、CAATs Flowの各プロセスは一方通行ではなく、相互に循環しながら最後のプロセスに至るというイメージになります。

 

後半は、『監査の自動化について(2)』に続きます。

 

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監査の自動化について(2) ~Continuous Auditing~

皆さ~ん、こんにちは。

今回は、『監査の自動化について(1)』に続き、監査の自動化の考察の続きをしたいと思います。前回の記事に掲載したCAATs Flowの図を再掲します。

CAATs Flowの各プロセスのうち、当面は、下記のプロセスはこれまで通り、監査人が行うことになると考えています。

  • 事象の知覚
  • 監査テーマ(リスク・課題)の選定
  • 手続の立案(分析シナリオの作成)
  • 結果の評価
  • 結果の報告

上記のプロセスはいずれも状況に応じて考察や判断を伴うものであり、将来的には人工知能などを活用して自動化することが期待されていますが、現時点では、実用化のレベルには達成していないと考えています。

上記以外のプロセス(データ入手、データ分析)については、既存の技術で大幅に自動化することが出来ます。ここで、継続的監査(Continuous Auditing、以下CA)という概念を説明しておきます。CAとは、CAATsで作成したデータ分析ツールのプログラムをコンピュータのスケジューラーによって自動実行する監査技法であり、CAATsを前提とした監査技法になります。

CAが実現すると、不正の兆候が認識されると速やかに監査人に通知されるため、監査の進め方が大幅に変化する可能性があります。具体的には、CA導入前では、監査計画立案時に監査実施時期および往査場所を決めたうえで、往査現場で過去数か月分の取引データを対象にして監査を行いますが、CAでは、データ分析ツールのプログラムを日次で実行する設定にすると、前日に異常な取引データが検知されたら、すぐにメールなどで監査人に通知されるため、これまでのように監査先で監査対象取引を抽出して検討するのではなく、監査対象取引を日常的に抽出して検討するというスタイルに変化することが予想されます。CAが導入されると、タイムリーに異常な取引データを抽出し検討できるため、不正の早期発見と防止につながる可能性が高まります。

CAは処理に応じて下記のソフトウェアを使うと簡単に実現できます。

CAATs専用ツールは下記の特長を持ったソフトウェアであるため、比較的簡単にCAに導入できます。

  • データ件数に制限がないため、大量のデータを扱うことができる。
  • 操作ログをコピーしてスクリプトに貼り付けるだけでプログラムが作成できるため、定型的なデータ処理が簡単に自動化できる。
  • データ加工および分析処理の内容が操作ログに一元的に記録されるため、加工および分析処理の過程が簡単に把握できる。

今後、CAATsやCAが主な監査技法になると、監査人は、これまでの会計や監査などの専門的な知識のみならず、コンピュータを使ったデータ分析に必要な知識およびスキルを身につけることが求められるようになります。

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※2:CAATs ( Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法 )とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいい、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

※3:CAATsの普及を目的に、CAATsに長年携わってきた公認会計士が開発したCAATs専用ツール。開発および提供は三恵ビジネスコンサルティング株式会社が行っています。三恵ビジネスコンサルティング株式会社では、監査人が効率的にCAATsを実践できることを目的として、監査に便利なオープンスクリプト(※4)をWebサイトで提供することを予定しています。

※4:オープンスクリプトとは『THUMGY Data for Analytics』で実行できるプログラムであり、誰でも無償で利用でき、変更や再配布も自由に許可されています。

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CAATsに適した手続の3つの分類について

皆さん、こんにちは。
今回は、CAATs(※1)に適した手続について、考察したいと思います。
ご承知の通り、CAATsは監査人がパソコンとデータを利用して手続を実施する監査技法であることから、データの利用が前提になります。
このことから、CAATsを利用した手続を立案するに当たっては、入手可能なデータから手続を考えるアプローチもありますが、私は、CAATsを利用した手続を立案する方法は、下記の3つに整理できると考えています。

  1. 従来から実施している手続にCAATsを利用する方法
  2. テーブルレイアウト(※2)等の分析を通じて通例ではない取引等の抽出条件を特定して新規手続を立案する方法
  3. 自社が置かれている環境や過去事例などから新規手続を立案する方法

上記の3つの方法について、それぞれの定義やメリットおよびデメリットを下表にまとめました。

(三恵ビジネスコンサルティング株式会社作成資料より引用)

難易度としては、取り組むのが比較的容易な1の方法から始めてみてはいかがでしょうか。

ただし、新たな視点で不正・誤謬の発見を志向する場合には、3の方法にもチャレンジすることもお薦めします。

私は、CAATs導入のご支援をさせていただいているのですが、CAATsを現在実施している手続とは別枠で捉えられている方が多いように感じます。

もちろん、これまでとは異なった技法を用いるため、別枠で考えざるを得ないのですが、社会でCAATsが一般的な監査技法になり、監査に関わる全ての方々が、より効率的に、深度のある手続が当たり前に出来るような社会を夢見て、自分ができることをこれからも精一杯、取り組んでいきたいと思います。

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※1:CAATs ( Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法 )とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいい、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

※2:データベースの設計図のことを言います。

※3:CAATsツール:CAATs専用に開発されたソフトウェアのことであり、日本ではACL Analytics(開発元ACL Services Ltd.)とIDEAⓇが有名です。

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CAATsとAudit Data Analytics(ADA)について

皆さん、こんにちは。
今回は、CAATsとAudit Data Analytics (以下、ADA)について、考察したいと思います。

ADAについては、2015年にAICPA(※1)が発行した「AUDIT ANALYTICS and CONTINUOUS AUDIT」(こちら)に下記のように定義されています。
『ADAは、監査計画の立案や監査手続の実施を行うために、監査対象となるデータモデリング可視化を行い、パターンの発見異常値の特定、その他有用な情報を抽出する科学技術のことをいう。』この定義から考えると、ADAは統計分析手法を念頭に置いたデータ処理を行い、グラフなどでビジュアル化することを指向した概念であるといえます。

一方、CAATs(※2)は『監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法』と定義されており、データ処理のみならず、データを使った手続の立案などの上流工程も含むより上位の概念になります。

ここで、CAATsツール(※3)による手続の実施をイメージした図でCAATsとADAの関係性を考察したいと思います。

(一般社団法人 国際コンピュータ利用監査教育協会作成資料より引用)

上図の『CAATs Flow』とは、一般社団法人 国際コンピュータ利用監査教育協会が独自に定義したCAATsを活用した監査業務フローを意味しており、CAATsはCAATs Flowの各プロセスをすべて含んだ概念になります。

一方で、ADAは、主にデータ処理の中の統計的な処理を施したデータを使ってグラフなどでビジュアル化し、パターンの発見や異常値の特定を行うことに主眼を置いた考え方になると推察されます。上図で言うと、『統計的処理(赤枠部分)』に相当する部分になります。

CAATsツールは、データ処理ソフトとしては非常に有用ですが、統計的処理については、「R」等の統計分析を得意とするソフトウェアと組み合わせて使っていくことがより有効になる場合もあります。

「CAATsは古く、これからはADAの時代だ!」という論調の文章や発言を見聞きすることがあるのですが、ADAはCAATsに包含された概念であって、決して別物ではなく、また、「CAATsではなくADA」という考え方も正確ではないと考えます。
はやり言葉に惑わされず、データを使って監査を実務で活用できる技術者になるために必要な取り組みをこれからも着実に行っていきたいと思っています。

当記事の内容でご意見やご感想がありましたら、ご連絡をいただけますと幸いです。また、CAATsに関するご質問があれば、遠慮なくお問い合わせください。
お問い合わせ先:https://www.icaeajp.or.jp/inquiry/contact/

※1:American Institute of Certified Public Accountants, Inc.

※2:CAATs ( Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法 )とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいい、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

※3:CAATsツール:CAATs専用に開発されたソフトウェアのことであり、日本ではACL Analytics(開発元ACL Services Ltd.)とIDEAⓇが有名です。

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監査人がCAATsを実務で活用できる技能を身につけなければならない理由について

皆さん、こんにちは。
今回は、監査人がデータ分析技能を身につける必要性について、考察をしていきたいと思います。
昨今では多くの人が「システム=コンピュータシステム」と考えるのではないでしょうか。
しかし、システムを「所定の目的を達成するための手続」と定義すると、システムはコンピュータ利用の有無に左右されない概念であるといえます。
例えば、「狼煙(のろし)」は遠隔地で起こった出来事を迅速に伝達するための通信システムであり、コンピュータが存在しない時代に運用されていたシステムといえるでしょう。
これを会計に置き換えて考えてみた場合、会計を「人や組織の活動結果を経済事象として正確に説明すること」と定義すると、経済事象を正確に説明できる「システム」が必要になってきます。
この会計を支えるシステムが複式簿記であり、会計は「複式簿記というシステム(以下、会計システム)によって、人や組織の活動結果を経済事象として正確に説明すること」と言い換えることができます。そして、監査は、会計システムが正しく運用され、人や組織の経済事象が正しく説明されているかどうかを確かめる行為であり、特に会計監査人(公認会計士)は、主に会計システムを対象にして監査を行うことから、「会計監査人はシステムの監査人である」と言い換えることができます。
会計システムのベースがコンピュータシステムになってきたにもかかわらず、会計監査人はコンピュータの専門家ではないという認識から、本来、システムの監査人であるはずの会計監査人が監査に大きな影響を与えるコンピュータシステムに真正面から向き合って来なかった印象を持たざるを得ません。
その理由として、公認会計士の試験科目にコンピュータの基礎がないこと、公認会計士の『継続的専門研修制度』(CPE制度)の必須科目にコンピュータ関連の研修が求められていないことを挙げておきます。
コンピュータシステムが異次元のレベルで加速度的に高度化し、人工知能やロボットが会計監査人に置換わるという論調まで出てきている現状を考えると、そろそろ本気で会計監査人自身がコンピュータの基本を学び、データ構造を理解してデータ分析ができる技能を身につける時代になってきているのではないでしょうか。
監査人が、データ構造等の理解に基づいてリスクシナリオ(監査手続)を立案し、自らがコンピュータとデータを利用して監査を行う方法論をコンピュータ利用監査技法(Computer Assisted Audit Techniques, 以下、CAATs)といいますが、これからの会計監査人は、CAATsを実務で活用できる技能を身につけなければ、職業専門家として生き残っていくことが大変難しくなるのではないでしょうか。
また、会計システムは、会計監査人だけではなく、会社内に設置された組織によって行われる内部監査、そして、監査役によって行われる監査役監査でも監査対象になることから、CAATsを実務で活用できる技能は、会計監査人だけではなく、内部監査人にも監査役監査スタッフにも必要な技能といえるでしょう。

※1:CAATs ( Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法 )とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいい、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

※2:CAATsツール:CAATs専用に開発されたソフトウェアのことであり、日本ではACL Analytics(開発元ACL Services Ltd.)とIDEAⓇが有名です。

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