裁量労働制における不適切データについて

皆さん、こんにちは。

今回は、最近、話題になっている「働き方改革」関連法案の根拠とされていたデータに不適切と思われるデータがあったという点について、考察をお伝えしたいと思います。

安倍政権の肝煎りである「働き方改革」関連法案に含めた裁量労働制の対象拡大の根拠に疑義が生じており、関連法案の見送りなどが取りざたされています。今回の問題には、質問が同じレベルで行われなかったという点や、一般労働者の残業時間に不自然なデータが含まれていたという点などが指摘されています。

質問が同じレベルで行われていなかったという点については、今回の質問は、裁量労働制で働いている人に対して1日の平均時間を問いながら、一般労働者に対しては、1か月で最も残業の多い日の残業時間を聞いていたということが指摘されています。より実態に即したデータを収集するという観点からすると、質問先によって質問文を変えることに大きな違和感はありませんが、同じレベルのデータを収集できる質問になっていることが前提になります。今回の質問では、同じレベルのデータを収集できない可能性が高いことが問題視されており、結論ありきのデータ分析であると指摘されても無理はありません。

次に、データに不自然なデータが含まれているという点です。CAATs(※)では、まずは、入手したデータの信頼性を確認することが第一であり、大きな外れ値があった場合には、当該外れ値の内容を検討し、当該データを省いて残りのデータを使う、データを入手し直す等の検討を慎重に行うことが求められます。

分析結果の評価は、分析者もしくは分析を指示した人の判断に委ねられる部分が多く、恣意的にデータを作っていくこともできる場合があります。今回の分析結果が、結論ありきの分析であったかどうかは分かりませんが、CAATsでは、データ収集、データの信頼性の検討、データ分析、結果の評価という複数のプロセスで、それぞれのプロセスが適正に行われることが求められ、また、その実施過程の記録が求められます。今回のような事後的な調査を行う場合にも、実施過程の記録を検証することで、迅速に問題の所在を特定できる可能性が高いと考えます。このため、監査に限らず、今回のような法案の採否に関わるような重要なデータ分析や取締役会などで審議に使用する資料の作成など、企業の意思決定に影響を与えるような重要なデータ分析においても、CAATsは有効に活用できると考えます。

※:CAATs(Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法)とは、監査人が「コンピュータとデータ(以下、ITと表記)」を利用して監査手続を実施する技法をいう。故に、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

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