監査人がCAATsを実務で活用できる技能を身につけなければならない理由について

皆さん、こんにちは。
今回は、監査人がデータ分析技能を身につける必要性について、考察をしていきたいと思います。
昨今では多くの人が「システム=コンピュータシステム」と考えるのではないでしょうか。
しかし、システムを「所定の目的を達成するための手続」と定義すると、システムはコンピュータ利用の有無に左右されない概念であるといえます。
例えば、「狼煙(のろし)」は遠隔地で起こった出来事を迅速に伝達するための通信システムであり、コンピュータが存在しない時代に運用されていたシステムといえるでしょう。
これを会計に置き換えて考えてみた場合、会計を「人や組織の活動結果を経済事象として正確に説明すること」と定義すると、経済事象を正確に説明できる「システム」が必要になってきます。
この会計を支えるシステムが複式簿記であり、会計は「複式簿記というシステム(以下、会計システム)によって、人や組織の活動結果を経済事象として正確に説明すること」と言い換えることができます。そして、監査は、会計システムが正しく運用され、人や組織の経済事象が正しく説明されているかどうかを確かめる行為であり、特に会計監査人(公認会計士)は、主に会計システムを対象にして監査を行うことから、「会計監査人はシステムの監査人である」と言い換えることができます。
会計システムのベースがコンピュータシステムになってきたにもかかわらず、会計監査人はコンピュータの専門家ではないという認識から、本来、システムの監査人であるはずの会計監査人が監査に大きな影響を与えるコンピュータシステムに真正面から向き合って来なかった印象を持たざるを得ません。
その理由として、公認会計士の試験科目にコンピュータの基礎がないこと、公認会計士の『継続的専門研修制度』(CPE制度)の必須科目にコンピュータ関連の研修が求められていないことを挙げておきます。
コンピュータシステムが異次元のレベルで加速度的に高度化し、人工知能やロボットが会計監査人に置換わるという論調まで出てきている現状を考えると、そろそろ本気で会計監査人自身がコンピュータの基本を学び、データ構造を理解してデータ分析ができる技能を身につける時代になってきているのではないでしょうか。
監査人が、データ構造等の理解に基づいてリスクシナリオ(監査手続)を立案し、自らがコンピュータとデータを利用して監査を行う方法論をコンピュータ利用監査技法(Computer Assisted Audit Techniques, 以下、CAATs)といいますが、これからの会計監査人は、CAATsを実務で活用できる技能を身につけなければ、職業専門家として生き残っていくことが大変難しくなるのではないでしょうか。
また、会計システムは、会計監査人だけではなく、会社内に設置された組織によって行われる内部監査、そして、監査役によって行われる監査役監査でも監査対象になることから、CAATsを実務で活用できる技能は、会計監査人だけではなく、内部監査人にも監査役監査スタッフにも必要な技能といえるでしょう。

※1:CAATs ( Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法 )とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいい、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

※2:CAATsツール:CAATs専用に開発されたソフトウェアのことであり、日本ではACL Analytics(開発元ACL Services Ltd.)とIDEAⓇが有名です。

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☆CAATsを学びたい方への研修情報!
https://www.icaeajp.or.jp/learning/courses/

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