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CAATsとIoTについて

皆さん、こんにちは。

今回は、最近、話題になっているCAATsとIoTとの関連性について、考察をお伝えしたいと思います。

IoTとは、「Internet of Things」の頭文字を取った用語で「モノのインターネット」と言われています。これまでインターネットで身近な「モノ」といえば、パソコンやスマートフォンなどの情報端末がすぐに思いつきますが、これからは、ありとあらゆる「モノ」がインターネットにつながっていくことが予想されており、現在もその範囲は拡大しています。

IoTについて考察する前に、IoTの前提であるインターネットが担ってきた機能について考えてみると、下記のように変遷してきたのではないかと考えられます。

【第一段階】
①情報を公開したい人が情報を入力して公開する
②情報を求めている人が検索条件を入力し、求めている情報を入手する

【第二段階】
①第一段階で入力された情報(公開している情報、検索情報、利用者の属性情報等)をクラウド上に蓄積する
②蓄積された情報とインターネットの利用者がソーシャルに情報を交換する

【第三段階】
①第一段階で入力された情報に加え、第二段階で入力された情報(ソーシャルメディアの情報等)など蓄積された情報とインターネットの利用者の関連を分析する
②インターネットの利用者が求めている情報を自動的にフィードバック/レコメンデーションする

インターネットが社会に極めて速く浸透したため、第一段階は非常に短い期間だったかもしれません。現在は、第二段階から第三段階への移行期にあり、インターネット上の広告などは、知らず知らずのうちに収集されている個人情報や情報端末情報等に基づいて表示されています。

上記を踏まえ、IoTについて考察してみます。IoTは、「モノ」がインターネットにつながるということですが、「モノ」から得られる情報には、温度や湿度、明るさ、音の大きさ等の『環境に関する情報』や、移動している、傾いている等の『動きに関する情報』、『位置情報』などがあります。

これまで情報は人の手を介して入力されていましたが、「モノ」がインターネットにつながることにより、「モノ」が稼働するだけで客観的に収集された様々な情報が自動的にインターネットを通じて入力され、膨大な情報が蓄積されるようになります。蓄積される情報が多ければ多いほど、分析の精度が上がり、フィードバックの質も向上することになります。

IoTという概念が出てきたことで、例えば、自動車分野では自動車に搭載されている『動く、止まる、曲がる』等のセンサー情報をリアルタイムに収集することで、道路の込み具合を把握し、最適なルートをフィードバックするサービスや、農業分野では土壌の状態や日照量などの情報から水やりや肥料の分量を自動的に調整するなど、新たなサービスが生まれています。

もしかしたら、冷蔵庫そのものは無料で消費者に提供し、冷蔵庫に組み込まれたセンサーから冷蔵庫に入っているものを自動判別して、レシピを冷蔵庫の正面に埋め込まれたモニターに表示する、あるいは、食品を自動発注する等のサービスを有料にしてマネタイズするビジネスモデルやIoTから得られる情報に基づいて売上を認識するというビジネスモデルなども出てくるかもしれません。

このように、技術の進展に伴った新しいサービスが出てくると、監査もそれに対応していく必要があります。これまでは主に財務情報に目を向けていた監査人も、上記のような「モノ」から収集される情報、すなわち、非財務情報にも目を向けなければ対応できなくなるのではないでしょうか。

ただ、新しいサービスがコンピュータシステムを利用する限り、CAATsという観点からは、非常にシンプルに考えることができます。これは、どんなに複雑なビジネスモデルであっても、コンピュータシステムの本質的な要素には『入力→データ→出力』という3つの要素しかないからです(下図参照)。

(一般社団法人 国際コンピュータ利用監査教育協会主催『ICCP試験対策講座』教材より引用)

上図は、前回の「【考察】CAATsとFinTechについて」でも引用した図ですが、IoTによる新たなサービスで影響するのは、上図の「入力」のバリエーションが増えるだけで、その他は基本的には大きくは変わりません。

つまり、FinTechの回で述べたのと同様、ビジネスモデルを観察し、『入力→データ→出力』という視点で情報を整理してデータを特定し、データ相互間の整合性やデータの正確性・網羅性等の検証を行うことで、必要な監査手続を実施することができるようになり、監査人としての役割を全うできるということになります。

CAATsを実務で活用できる技能があれば、ビジネスモデルをデータに置き換えて考えることができるため、今後、どのようなビジネスモデルが生まれても、監査人として柔軟に対応できるようになります。

これまでは、「ヒト」と「ヒト」をつないできたインターネットが、IoTが普及することによって「モノ」と「モノ」同士がつながっていき、より便利な社会になっていくのかもしれません。ただ、よりよい社会にしていくためには、これまで以上に私たちが意識し、よりよい社会にしていくための努力が大切になってくるのではないかと思います。

 

CAATs ( Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法 )とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいい、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

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CAATsとFinTechについて

皆さん、こんにちは。

今回は、最近、話題になっているFinTechについて、CAATsとの関連性に関する考察をお伝えしたいと思います。

FinTech(フィンテック)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きを指します(☆)。

FinTechは、私達の生活に身近な存在になってきています。例えば、複数の銀行口座やクレジットカード口座などを一つのスマホアプリで一元管理できる家計簿サービスや、お店で物を買ったり食事をしたりした際のお会計時に、iPadやiPhone等でクレジットカード決済ができる決済サービス、社会的に意義があるような取り組みにネットを通じてお金を集めるクラウドファンディング、スマホのアプリからお金を送れる送金サービス、投資のアドバイスをAIで行うロボアドバイザー等です。これまでは、『お金』にまつわるサービスは、銀行をはじめとした金融機関が担ってきましたが、Fintechでは金融機関のそれぞれが情報技術の活用によって、自社のサービスを提供するのではなく、複数の金融機関のサービスを横断的に利用してサービスを提供する形態が多く、サービス提供者も金融機関というよりもIT企業が主体になっています。

今後、金融サービスに関わらず、各種のサービスは情報技術を活用してますます多様化し、ビジネスモデルも多様化してくるでしょう。これに伴い、監査人にも多様化したビジネスモデルに対応した監査を実施することが求められてきます。しかし、新しいビジネスモデルが生まれても、また、ビジネスモデルがどのように多様化しようとも、それぞれのビジネス遂行にコンピュータシステムを活用する限り、CAATsという視点からすると、すべきことは本質的には変わりません。これは、どんなに複雑なビジネスモデルであっても、コンピュータシステムの本質的な要素には『入力→データ→出力』という3つの要素しかないからです(下図参照)。

(一般社団法人 国際コンピュータ利用監査教育協会主催『ICCP試験対策講座』教材より引用)

つまり、ビジネスモデルを観察し、『入力→データ→出力』という視点で情報を整理してデータを特定し、データ相互間の整合性やデータの正確性・網羅性等の検証を行うことで、必要な監査手続を実施することができるようになり、監査人としての役割を全うできるということになります。

CAATsを実務で活用できる技能があれば、ビジネスモデルをデータに置き換えて考えることができるため、今後、どのようなビジネスモデルが生まれても、監査人として柔軟に対応できるようになります。

なお、ビジネスモデルをデータに置き換えて考えることができる技能は、監査人に限って必要な技能ではありません。何か自分に強みを持ちたいと思っているビジネスパーソンの方にもCAATsを実務で活用できる技能は有用であると考えます。

 

☆:日本銀行ホームぺージより引用(https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/kess/i25.htm/

※:CAATs ( Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法 )とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいい、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

 

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CAATsとRPA・RDAについて

皆さん、こんにちは。

今回は、最近、話題になっているRPAとRDAについて、CAATsとの関連性に関する考察をお伝えしたいと思います。

RPA (Robotic Process Automation)とは、人間がPC操作によって行う、定型的もしくは反復的な作業を自動化する概念のことを言います。言い換えると、RPAはPCを使った事務作業を自動化するための技術と言えます。

これまで、人が行っていた作業をソフトウェアが代替するということで、Digital Laborともソフトウェアロボットとも言われています。

RPAとよく似た概念で、RDA (Robotic Desktop Automation)という言葉があります。RDAも定型的もしくは反復的な作業を自動化する技術のことをいいます。

RPAとRDAは、いずれも定型的もしくは反復的なPC作業特に高度なプログラミング知識がなくても簡単に設定できるという点では共通していますが、RPAは複数のアプリケーションを横断的に使用して一つの作業を完結する場合に適している一方、RDAは一つのアプリケーション内で作業を完結する場合に適しています。

これまでは、複数のアプリケーションの操作を有機的に結び付けて行う作業を自動化することが難しかったため、人がその作業を手作業で実施していましたが、RPAでは複数のアプリケーションの操作を一連の操作として簡単に登録して再実行できる機能を提供できるようになったことで、これまで人が行ってきた作業を自動化することができるようになってきました。

例えば、業務システムから特定の条件を設定してデータを所定のフォルダに所定の名前で保存し、EXCELで集計処理をしてレポート用のファイルを作成する作業や、PDF文書を読み込んで特定の箇所の文字をコピーして所定のEXCELファイルに貼り付けて表を完成させるといった作業等が自動化できます。特に専門的な判断やコミュニケーションが必要ない作業等はRPAを使うと自動化され、業務効率が飛躍的に向上します。

RDAはRPAと同様に事務処理の自動化を実現する技術ですが、対象となるアプリケーションが一つだけとなります。つまり、特定のアプリケーションで完結できる作業に適している技術といえます。

さて、監査という視点で考えた場合、RPAはどのように活用できるのかについて、考察してみます。

上述したとおり、「RPAは定型的もしくは反復的な作業を自動化できる」という点では、毎回使用する各種分析資料(期間比較表や月次推移表など)を自動作成するという作業に活かせる可能性はあります。ただ、それ以上のことは専門的な判断を伴う分析作業が主体となるため、作業の自動化というよりも、データを確認しながら条件を変えて分析をすることが通常であることから、監査にはRPAという技術はそぐわないと考えます。

また、データ分析は複数のアプリケーションを横断的に使用して一つの作業を完結するというよりも、分析しやすいアプリケーションを使用したほうが業務効率が高いため、RPAを利用する積極的な理由は見当たりません。

では、次に、監査において、どのようなRDAソフトウェアが最適かを考察してみます。

CAATsツール(ACL/IDEA)は、監査に特化したデータ分析ツールであり、高度なプログラミング知識がなくても簡単に作業の自動化ができることから、CAATsツール(ACL/IDEA)はRDAの一種といえます。

EXCELにも「マクロの記録」という機能があり、操作履歴を自動的に保存して、操作の再実行をすることができますが、実用的なレベルにするためにはVBA(Visual Basic for Applications:マイクロソフト製のMicrosoft Officeで実装されているプログラミング言語)でメンテナンスする必要があるため、ハードルが高いと言わざるを得ません。

一方で、CAATsツール(ACL/IDEA)には、操作履歴を自動的に保存する操作ログ機能があり、操作ログをスクリプトという簡易的なプログラムに簡単に変換でき、このスクリプトはプログラミングの知識がなくても簡単にメンテナンスが可能です。従いまして、監査においては、CAATsツール(ACL/IDEA)が最適なツールといえます。

RPA 、IoT 、FinTech など、様々な言葉が生まれては消え、また、生まれてきます。これからの監査人はそれぞれの概念や技術を自らの業務への影響を考えて研鑽を積んでいく必要がありますが、決して言葉に惑わされることなく、その本質を見極めて、身につけていくべき技能は何かを考えることが重要であると考えます。これからの監査人にとって、外せない技能はCAATsを実務で活用できる技能であり、この技能を身につけていれば、AIやロボットが幅広く社会に普及した時代になっても、AIやロボットを使いながら、自らの職務を全うできるようになると私は信じています。

 

※:CAATs (Computer Assisted Audit Techniques, コンピュータ利用監査技法)とは、監査人がコンピュータとデータ(IT)を利用して監査手続を実施する技法をいう。故に、CAATsを利用して監査を行うということは、ITを活用して監査を行うことと同義になります。日本では、CAATと表記されることが多いのですが、海外では、複数形のsをつけたCAATsと表記されることが多く、ICAEA(International Computer Auditing Education Association)でもCAATsという言葉を採用しているため、当BlogとしてもCAATsという言葉を使用しています。

 

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